「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

綿飴

私は綿菓子でいいの あなたの口の中で溶ける 淡いピンクでいいの 舌を真っ赤に染めてあげる 祭りの思い出だけ 残ればいいの 騒めいてるの 素敵でしょ 虫が沢山死んで夏が終わる 仕舞いの祭り 一口だけでも 齧ってみて ほんのひととき 甘く 楽しませてあげる…

愛撫

止まった時計 過ぎた時間は虹の弧を描いて 文字版の上で眠る 現の計らい 記憶の中で飛び交う怒号をかき消す様に 夢においで 抱いてやろう 私を守る獅子が そう 呟いた

変身

あなたがわたしに 薔薇に成れと言うのなら 鮮やかに紅く色づいて 切られて硝子の器に生けられて 花芯が解けて枯れるまで 静かに窓辺に咲いていよう あなたがわたしに 煙草の煙に成れと言うのなら 淡く蒼く匂い出て 虚空を漂い夢を見て 瞬く間に風と紛れ 壁の…

痕跡

対峙する二人の私 互いの喉元に剃刀を突きつけ合って 動かない 目を逸らさない 声を出さない 「お前は誰だ」と 問うている どちらも私 どちらも私では無い 否定も肯定も意味が無い 目を見開いたまま眠れ 沈黙が吐き出す鈍色の糸にくるまれて 歪な繭に成れ 時…

虚無

apoptosis 身体に仕組まれた時限爆弾 この身をメスで切り刻んで 追いかけても、追い付けない自死 いっそ死を抱きしめて心中しようか いや、死を殺そうか この世は幻 わかっているのに振り回される人間の愚か 死ですら幻 死にゆく者にしか 答えを知らされぬ謎