「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2009-01-01から1年間の記事一覧

空転

言葉がもつれて 感情に追い付かない 横書きのフォントでは表せない気持 私はいつ、ペンを捨てたのだろう

浴室

濡れた髪から落ちる雫 洗い流れる残り香 シャワーが叩く肌 自分で抱く肩 このまま 水になって流れてしまいたい 叶わない願いを抱いたまま ひっそりと透明になって どこかへ消えたい 湯気だけをまとって 唇を噛む 月夜

役者

抱えた狂気の その滑稽さを笑え 誰にも見えぬ荷物 何をそんなに重そうに引きずるのかと 自分を笑え パントマイムの役者の様に 無い物を有る様に演じられるのなら 有る物を無い様に演じればいい 愚かだと罵る者が居たら その者を嗤え 束の間の人生 悲劇も喜劇…

伐採

まだ、咲かぬのに 百日紅は幹を切られ 開きかけた蕾をたわわにたくわえたまま 落とされた枝は焼かれた 毎年、紅い花より遅く咲いた 見上げては、いつ咲くか、いつ咲くかと 心待ちにしていた 真白な花だった まるで夏に咲く桜のごとく 一途な可憐を見せてくれ…

遺言

百足を殺した夜 左手の薬指が真っ赤に腫れた 断末魔の叫びの代わりに 私の利き手に渾身の力を込めて噛み付き 黒光りする虫は 悶絶の痛みを残して死んだ 痛かろう? 殺したお前が悪いのだ 生きているから痛いのだ 存分に生を味わえ 亡骸は小さく縮こまり もう…

告白

薔薇に告ぐ 秘めた思い 棘さえかまわず 唇に寄せる紅いヴェルヴェット 焦がれて熱い吐息とともに 咲き乱れ 散ってゆけ 密かに

雑踏

人がいて 人がいて 皆 独り

挑発

恐怖をしらない 幸福もわからない 中途半端に ねじれている そんな抜け殻の大人たちから 育たぬ前に去勢され 生き抜く力を鍛えられず ただ、老いる事だけに熱心で 「今」を使い果たす子供たち 命の固まりだったはずなのに 生まれた時から疲れ その重さを持て…

選択

愛する者の為に死ぬ 愛する者から「殺してくれ」と懇願されたら殺す どちらの愛情が勝っているのだろう 最近、そんな事ばかりを考えている

解放

糸切り歯で噛み切った 赤い糸は 小指の先にぶら下がる 血管の有様 もつれてほどけない縁/えにしは 指を縛り 胸を締め付け 夜に閉じ込める 途方に暮れて だから切った 唇から血を滴らせ さあ お行きなさい 歩いて行ける 今なら 何処へでも

失恋

言葉が哀しい 恋でたわむれ はじけた言葉が 愛に着地するとは限らない 許されない時間と 切ない空間を漂う 嘘はさびしい 視線を瞼でさえぎる時 思い出の断片は まつげに集まって 涙に流れる 言葉は哀しい 取り戻せないから 言葉は哀しい

彼岸

何もかもが飽和状態で木の芽時

足跡

咲き初めた水仙が 立ちすくんでいる 蕾の間にまで、雪をたくわえて 静かに 雪明かりでぼんやり淡い寒空は 人の暮らしに寄り添う様々な色を隠す 真っ白な闇は音を吸い取って 密やかに固まった 振り向いて足跡を見遣ると 心細い形 雪が降れば消えてしまう 雪が…

沈黙

視線を遊ばせていたから 背中が空っぽになった 肩透かし 鎖骨が震える 三日月が刺さりそうで怖い 眼を瞑ったら 雪の匂いがした

即興

言葉遊びに現を抜かし迂闊に上擦る手持ち無沙汰の多彩な気持ち