「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

部屋

鞭を撓らせ固く冷たい床を打つ様な声で 女は拒絶する 男は黙っている 抑圧の全てはお前のせいだと罵る女の 軽蔑と憤怒に満ちた青い炎を立ち上らせる瞳を見ている かつて椿の花弁の様に紅潮し、しなやかに自分だけに捧げられた肢体を 耳に押し当てられた柔ら…

陽炎

桜の木の下で爪を噛む子が遠くを見ている眉を顰めながらじっと何処かを見詰めている 桜の花は散っていて咲いていたのが本当か春の仕掛けた華やいだどんでん返しの芝居の様で慌ただしく新緑を纏った枝は何も無かった顔をしてざわざわと風に騒いでみせる 春だ…

徹夜

瞬きすら忘れて 手繰り寄せる様に朝に行き着いた 夜はその影をいつの間にか引き取っており 気が付いたら部屋は顔色を変えている ただ、春の日差しが ぽかんと窓の形に床へ落ちる 闇を閉じ込めていた場所に不釣り合いな光は うろうろと居場所を求めるけれど …

途中

生まれたその日に乗り込んだ 葦舟に揺られ 両岸の見えない川を下る 帆は無く、櫓も無く ただ 漂い来る言葉を 拾っては捨て 拾っては捨て そして呟き 死ぬ迄の あわいを 玩ぶ