「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

粉砕

砕けろ 一瞬、そう願った 私は車の窓硝子を殴った 頑丈な硝子は割れる事無く ただ、ひ弱な手に痣が残った 尊敬する先輩が 重篤な病だと知らされた やる方の無い思いをどうしようもなく 砕け落ちよと、硝子を殴った 砕け落ちよと、拳の骨で殴った 力不足のこ…

夏祭

時計で日付が変わるのを見届けて 爪先の火照りに気が付く 迷わず体温計をくわえた 37.5度 平温が低めの私には、少し高い 解熱剤を禁じられた身体 安静にするしか無い きっと、体内で闘っている 均衡を脅かす何かを排斥する為に 肌が、殺気を帯びている 理不…

駆引

告白しようか 私は嘘つき

痛覚

痛みは、はかれない 最先端の機器を使えば 数字や、グラフや、色で 示されるらしいけれど 重さや、苦しさや、やり切れなさまで 表示はしない 人はミリグラム単位の毒で死ぬ なのに釦くらいの鎮痛剤は役立たず 痛みを殺してくれない 痛みを嫌う思いをわかって…

知識

歴史の襞をめくろうとすると 自重を発揮して 影を隠そうとする 変化するその時々の力を借りて 知ろうとするものを四次元の彼方へ放逐する 真実は幾重にも折り重なりあう思惑に包まれ その糸口は絡まり、扉には鍵を掛け 誰からも、どの角度からも 容易く見え…

触感

さわって私の言葉にさわってみてそれだけでいい あなたに伝えたくて私の芯で育てた思いが言葉になって爆ぜてゆく どうぞさわって確かめて欲しい張り詰めた感情の弾力を感じて欲しい 私もあなたにさわりたい息を殺した指先であなたの思いをなぞってみたい悪戯…

創作

「月がとっても青いから遠まわりして帰ろう」 と歌われた小道は すでに車しか走っていないかもしれない もう、無くなってしまったかもしれない 「蘇州夜曲」の流れた街は 恋人達に素っ気なく 観光客が闊歩する 「夜来香」は、見直され 懐古趣味の若者が歌う…

尺度

「私の事、どのくらい好き?」 「けっこう好き」 「ふーん」 女は、確認し、同意を求める 男は、はぐらかし、黙る 恋愛ごっこ いつまで続くやら

初夏

熱帯夜の予告で開けた朝 窓際で鳴く蝉に目が覚めた 今年初めての声 場違いの恋唄 肌にじわりと暑さがにじり寄る 群れてなく蝉ならば それは風景にもなるだろう けれど、たった一匹の その身を搾る様な鳴き声は 何処にもとけ込まずに 初夏の朝をかきむしる 暗…