「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

本音

気持ちの良い五月の夜 美味しい食事を終えた後で 会話して居た相手から 「私はあなたの言葉で 殴られ続けている」 と、告白された アルコールで滑らかになった舌は 本音を吐き出したのだろう 一瞬にして私が触れる周りの景色が凍った 暴力に嬲られて育った私…

良心

胸の奥が痛むから 誰かに冷たく当たったのだろうかと 心臓を取り出してみたら 錆びて居た 油を差して 錆を落とした心臓を 慎重に戻す きやきやした痛みは取れたけれど 良心の痛みでは無かったらしい 何処かに持って居るのだろうか 優しさや正義など持ち合わ…

薔薇

抱擁

あなたが私を抱きしめる時 私の身体はすでに過去で 私はあなたの背中を通り過ぎている 私があなたを抱きしめる時 あなたの心は身体から離れ あなたは私の背中を眺めている 夕陽の様なあなたは 赤い閃光を一瞬だけ放ち うなずいた水平線の私に沈む 蒼い夜を静…

心臓

心臓を取り出したら 錆びていた ギスギスと生きて居るのは そのせいかと合点がいった 油売りを探しにゆこう 鼓動が止まらぬ内に 大きな瓶を背負い 良く日に焼けた顔の油売りを 西の方で見掛けたと 誰かが言ったとか、言わないとか

五月

空を見上げ あまりの眩しさに 光から逃げて俯いた 湾曲した視線は 影の的を射抜く 眼を瞑っても 光線の残像を持て余し 諦めるしかない 痛みにも似た感覚に痺れ 再び虚空を凝視してしまう 五月よ 光の魔法よ 呪文を受けた者達は 花々の周りを乱舞する 楽園に…

社会

鏡を見る瞳に 砂漠が映った ふとした仕草の端々が 乾いている意味を知る 漫然と生きる事は易く無く 日々の移ろいを 安全な場所から見送るだけで 競争に参加していない事を戸惑え と誰かが囁く 人の数だけ有る日常を 一つと数える計算に 目眩がする 個が個だ…

角度

鋭角の孤独を 慰める為に 足りない角度が知りたい 自分は何度ですか 幸せ迄 何度足りないのですか 分度器を当てて 答えてくれる人は居るだろうか いっそうの事 サンドペーパーで 削って欲しい ツンツン尖って 色々傷付けるのは もう疲れたから 取り敢えず 最…

初夏

皐月の声を聴いて久しい 春の花は散り 夏への支度が始まっている 新緑は光を帯びて煌く 風が樹々を撫でると 緑の欠片が四方へ弾け飛び散る 眩しい 人間は立ちすくんでいる 孤独の意味を考えている それぞれが個で有る事の実感に 不慣れな者は怯えている 思考…