初夏
皐月の声を聴いて久しい
春の花は散り
夏への支度が始まっている
新緑は光を帯びて煌く
風が樹々を撫でると
緑の欠片が四方へ弾け飛び散る
眩しい
人間は立ちすくんでいる
孤独の意味を考えている
それぞれが個で有る事の実感に
不慣れな者は怯えている
思考の隅に影を住まわせている
出口の無い迷路は常に用意されているのに
眼を背けて来たから
いきなり知らない扉の前に立たされて
鍵が無いと嘆いている
光は夏に向かって
益々強くなるだろう
樹々や草花の緑も濃くなってゆく
やがて梅雨もやって来る
人間が居なくても
自然は巡る
何の不自由も無く
知恵が人間と自然を分つ
と言うのなら
試されて居る今
急いで答えを出さなくてはならない
自然と共存して生き残れるか
駆逐されて消えゆくか
知恵は勝つだろうか?