「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

初夏

皐月の声を聴いて久しい

 

春の花は散り

 

夏への支度が始まっている

 

新緑は光を帯びて煌く

 

風が樹々を撫でると

 

緑の欠片が四方へ弾け飛び散る

 

眩しい

 

 

 

人間は立ちすくんでいる

 

孤独の意味を考えている

 

それぞれが個で有る事の実感に

 

不慣れな者は怯えている

 

思考の隅に影を住まわせている

 

出口の無い迷路は常に用意されているのに

 

眼を背けて来たから

 

いきなり知らない扉の前に立たされて

 

鍵が無いと嘆いている

 

 

 

光は夏に向かって

 

益々強くなるだろう

 

樹々や草花の緑も濃くなってゆく

 

やがて梅雨もやって来る

 

人間が居なくても

 

自然は巡る

 

何の不自由も無く

 

 

 

知恵が人間と自然を分つ

 

と言うのなら

 

試されて居る今

 

急いで答えを出さなくてはならない

 

自然と共存して生き残れるか

 

駆逐されて消えゆくか

 

知恵は勝つだろうか?