「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

伝言

遠い日の記憶も借りて 私は歌を歌う 視線を真っ直ぐに前を向いて 今の言葉の形で歌を歌う 旋律は無い こどもの頃に母と歌った歌は もう、どこかに仕舞い込んだ 私は自分の言葉で歌う それはつぶやきになり、会話になり、詩になって あなたに届けと願う 黙っ…

消去

そこかしこに ちらばった 私は自分の欠片を拾いあつめ 組み立ててみたけれど、それは 途方もなく最初とかけはなれ はなればなれで さて、困った 元の形がわからない

頭巾

明け方 小鳥達がさえずる 闇に隠れていた木々を太陽が照らし出す時 そのおしゃべりを聞きたい 何を話しているのだろう 叫んでいる? 自然はいつも 話し掛けているのだと思う けれど 人はそれを聞かなくて 聞こうともしなくて 痛い目に遭い続けて 沈黙ほど、…

火傷

恋をして それは爛れて 火傷の様になっている 潰したいけれど跡が残りそうだから いじれない水疱 じらされて そして 脅されているのに おとなしく待っている 切羽詰まっているのに 微笑んで 駆け引きのつもりだけれど 既に負けている 負けたふり? もう 好き…

遊戯

万華鏡の硝子の向こうに咲いた花 満月の光で覗いてごらん 小さな白いうさぎがこっそり 投げキッスをしてくれる

凝視

十五歳の私の 前髪を一直線に切りそろえた眼差しが 睨む 何を戸惑っているのか、と 残酷で幼稚な魂が 育たずに 見据える 無駄に年をとっているだけなのか、と 脅す 何も 持ち合わせていなかった 恐れをも、近づけなかった そんな年齢が有った 私の心に 裏打…

出発

待つ事に慣れてしまった 待たされる様に飼い慣らされてしまった 時が 掌から はらはら と こぼれ落ちてゆく 甘え 甘えさせたから 互いを許し 束縛してしまったから 自業自得 けれど ここを終の住処と定めたわけじゃない 逃げようと思ったならば、いつでも逃…

循環

五月の雨をしとねに 髪を濡らして横たわる 白い指先を遊ばせながら 薄いまぶたを閉じて 雨音を読んでいる 屋根で砕ける 樋をスルスルとつたう こぼれて爆ぜる 雨を思う 天と地を行き交う水の輪廻 知りたくて 私は、こっそり調べている

守護

私の中に 獅子が眠っている 琴線がふるえるたび その獅子もタテガミをふるわす 目を細めて、欠伸をする でも、起きはしない 時々、目を開けて じっとこちらを見ている 身じろぎをしないでいると また、眠る 彼が立ち上がるのは 私が身の危険を感じた時 何か…

感帯

そこじゃない あなたがまさぐって 勝手に悦に入ってる場所 私には感じない 誰から教えられたか知らないけれど 自分で発見したんだか判らないけれど 皆に同じことをくり返して 同じように気に入ると思うなよ 千差万別 人は 秒刻み以上の速さで変化する ずっと…

再来

フラッシュバック 未だ、逃げ切れない

返信

返事を待っている 待ち侘びている そして 心が錆びてゆく 全ての問いに 全ての人が答えてくれない事は 判っている けれど、返事を待ってしまう 「わからない」 そんな答えでもいいのに 「もう 問いかけないで」 そんな 答えでも いいのに マリー・ローランサ…

溶解

時間が溶けてゆく 追い付けない 手が届かない 流れる 残像だけが有る それは苦い形をして 心の隅に 転がっている

母親

最も大切な人 最も私を愛してくれる人 最も美しい人 お母さん あなたの娘に生まれて私は幸せです あなたの為に 私は生きています

摂取

雨に叩かれた 生まれたての羽虫 飛べなくて 地面を這いずる 其れを小鳥が啄む 無情も非情も関係 無い 食物連鎖は 淡々と 巡り 巡る

明日

ほとんど眠らずに朝を迎え そのまま街を徘徊していた 気が付けば もうすぐ日付が変わる時刻 太陽にも嫌われた今日 ひたすら歩き続けた一日が 終わる 生きていると無味な日の方が多くて 退屈を噛み殺すのに苦心する けれど生活はそれだけで済む筈も無く 無情…

衣替

すべて みずから あらいながし すてた 肌をもぬぎすてて あたらしい 今を また まとってゆく

外方

雨を滴れそうな雲に焦らされて 出掛け兼ねている あなたの為に選んだ靴は赤 私の肌が映える様に 女は狡いから 今日、此の靴が履けないなら あなたに逢わなくても構わないと 気持ちが掠れる まるで シーソーの上を歩く様 往ったり来たり、上がったり下がった…

愉悦

あなたは笑っているつもりだろうけれど 私には泣き顔に見えます 投げ遣りな あなたの視線の先には何 虚ろをも通り越して 彼岸の先を想っている様なその横顔 私を放ったらかしにして独りで枯れて行くのですか 例えば 縋り付いて泣いて見せても あなたは私と目…

慟哭

二人の孤独それは別々で男と女のそれぞれの寂しさ接吻をしても、抱き合っても何も形を変えない 俯いて 跪いて 泣き崩れても変わらない悲しさ 判っているから 黙っている寄り添っている 二つの孤独

拒絶

私の奥に眠る少女を見破る あなたが 憎い 放って置いて欲しいのに 静脈の浮き出た青白い腕を掴んで 引きずり出そうとする 何も見えない、何も聞こえない、何も知らない世界に せっかく閉じ込めているのに 無理矢理、扉をこじ開けて 押し入って来るあなたが …

腐乱

指を銜えて しかめっ面をして あさっての方向を 物欲しそうに 睨みつけている少女達 あなた達は子供ではなく 大人でもない 限られた時間の檻に飼われる生き物 退屈に怯えながら拗ねてみせる そのむき出しの素顔で 出来損ないの媚態をくねらせ 笑い転げている…

煩悩

賢い人に成りたい でも 愚かな女で在りたい

小鳥

暖かいので 窓を開けて、ぼんやりと外を眺めていたら 真向かいに茂る木の枝に 鳥が一羽止まっていた 瑞々しい新緑の影にひっそりと その端正な姿を見せている 小さな鳥 名前は知らない しなやかな、ほっそりとした足で、しっかりと若木を掴んで佇むそれは黙…