創作
「月がとっても青いから遠まわりして帰ろう」
と歌われた小道は
すでに車しか走っていないかもしれない
もう、無くなってしまったかもしれない
「蘇州夜曲」の流れた街は
恋人達に素っ気なく
観光客が闊歩する
「夜来香」は、見直され
懐古趣味の若者が歌うらしい
そんな歌を口ずさむ母、教えてくれた人
ベルカントのソプラノは出なくなったけれど
多肉植物を育てながら、時々小声で、きげんよく良く歌っている
歌だけではなく、裁縫、編み物、料理
つくる事の楽しさを教えてくれた
彼女の趣味は少し前までキルティング
ベッドカバーを一人で、あっというまに縫い上げた
最近は、最先端科学の粘土を使って、本物と見まごうばかりの造花をこしらえている
次は、編みぐるみをつくりたいらしい
以前、端布でテディベアを山ほどつくり、近所の人へ配っていた
ここにも一匹、赤いリボンをした緑色のクマが居る
母に褒められるのが嬉しくて
私はものをつくった
つくり続けている
今は、誰かに喜んでもらえるのが嬉しくて、ただそれだけで
母の育てるメダカが増え過ぎているらしい
どうしよう
私の部屋には、それぞれに充足した水槽が二つもあるのに