「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

墜落

堕ちたくて
跳ぶのだけれど動けない
果たして浮いたまま止まっているのか
そこでふわりと目が醒める


夢すら侭ならない夜に漂う身体を持て余して
捻れた時空に逆らう様にはみ出た意識を
辛うじて支える自重の危うさ


他愛の無い夢
せめて望を枕に預けたまま
飛天の様に両手を広げて
眠りの底に堕ちて行きたいのに


冴えてしまった真夜中の眼差しは
混沌の辺を彷徨いながら
堕落の快感を中空に貼付けて
再びの夢魔の囁きを待ち詫びている
意識の裂け目に巣食う虚無
張り巡らされた放射状の誘惑
突き破って瓦解する自我の幻
夢と現を往き惑い記憶を凌駕する痙攣した感覚


堕ちたい
このままこの夜を無限の速度で堕ちてしまいたい
何処からでも何処へでもいい
方向が定まった時 力が落ちる先を失えば
それは飛翔へと変化する


堕ちることは翔ぶこと
はがゆい概念を外してしまうこと
永遠の
その先の瞬間を見届けにゆくこと