「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

手紙

返信の来ない手紙を書き続ける


お元気ですか
もう夜は秋のにおいがしますね
夏を秋を早駆けした虫達の死骸のにおい
この前、百日紅の幹で蝉の幼虫の抜け殻を見つけました
今頃脱皮して大人になっても


ああそうですね
子供で居る事に我慢がならなくて羽をきれいに乾かさないまま
中途半端に大人になって
挙句の果て風任せでその日その日を漂っている私より
他の者達から遅れてでも地面に這い上がって来た
この蝉の方がよっぽど健気で立派かもしれない
お元気ですか
私は今日も空を眺めています


返信の来ない手紙を書き続けている
あて名もあて先も何も無い手紙を
赤いポストに投函する
今は沈丁花が植わっている
その場所に