「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

椅子

真夜中の時計の音を聞きながら

後、どれほど数えたら朝が来るかと考える

  

美しいものを想像したり

優しい出来事を思い出したり

そんな事は無理だと判っているから

深呼吸して時が過ぎるのを待つ

  

指先が悴む

猫が鳴いている

冬の太陽の微かな匂い

少し乾いた喉

閉ざそうとしても開いてしまう瞼 

五感はチグハグ

 

憂鬱とは脳の中だけを蹂躙するのでは無い 

全ての感覚を麻痺させ奪う 

それを実感するのは夜

 

どんな薬も効かない闇の栖と化した城で

不眠の主と成り 

せめて座り心地良く誂えた椅子に片肘付いて 

静けさを弄ぶ

 

逃げ場所は

何処にも無いのだから