「鏡の見る夢」

夢にまで見た夢は夢のまた夢

夜会

ドアを閉める

エンジンを掛ける

ヘッドライトを点ける

 

外は車を叩き付ける雨

ワイパーを斥候に

夜を切り裂き滑り出す

 

高速道路、LEDのシャンデリア

見送り乍ら

万華鏡のアスファルトには

方向を失った水滴が踊り狂う

見惚れてはいけない

前を急ぐトラックが吐き出した噴水に溺れ

一瞬で視界を失う

 

湿度百パーセントの夜会へようこそ

サイドミラーを砕いて

轟音の雷が笑う

 

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 どれ位走っただろう

少し休もう、軽く食事も済ませよう

湿ったスカートも乾かしたい

けれど

店に移動するだけで裾は雫のレースが揺れている

座席を濡らすだけだろう

 

突然

 

一斉に鳴り響く避難警告の音

奇声を上げる少年達

大人達は動かない否、関心が無い

唯、平然とスプーンを口に運ぶ

 

 

帰ろう。

帰れる家が在るのならば

何時もは忘れている

懐かしい扉を開けて

金魚が吐いたアブクの様な安心を

抱いて眠ろう

今夜は騒めき過ぎた

どんな夢も見なくて良い