夜会
ドアを閉める
エンジンを掛ける
ヘッドライトを点ける
外は車を叩き付ける雨
ワイパーを斥候に
夜を切り裂き滑り出す
高速道路、LEDのシャンデリア
見送り乍ら
万華鏡のアスファルトには
方向を失った水滴が踊り狂う
見惚れてはいけない
前を急ぐトラックが吐き出した噴水に溺れ
一瞬で視界を失う
湿度百パーセントの夜会へようこそ
サイドミラーを砕いて
轟音の雷が笑う
・・・・・・・・・・・・・・・・
どれ位走っただろう
少し休もう、軽く食事も済ませよう
湿ったスカートも乾かしたい
けれど
店に移動するだけで裾は雫のレースが揺れている
座席を濡らすだけだろう
突然
一斉に鳴り響く避難警告の音
奇声を上げる少年達
大人達は動かない否、関心が無い
唯、平然とスプーンを口に運ぶ
帰ろう。
帰れる家が在るのならば
何時もは忘れている
懐かしい扉を開けて
金魚が吐いたアブクの様な安心を
抱いて眠ろう
今夜は騒めき過ぎた
どんな夢も見なくて良い